ネットビジネス成功物語 ~回顧録6~
会社設立から半年後に思わぬ落とし穴が待っていた。
月商5,000万円をコンスタントに売り上げ順調に業績が伸びた頃、
取引先である高知県のレンタルビデオ店から電話が入った。
「そちらから仕入れたビデオにモザイクが入っていなくて社長が逮捕されました」
その電話で背筋が凍り付いてしまった。
と、同時にモザイクが入っていないってどういうこと?
裏ビデオ!?
次から次へと疑問が沸き起こり、
大量に仕入れをしていたそのビデオを検品をした。
再生を始め、カラミが入ったシーンで男女の局部には、
しっかりとモザイクが入っている。
多少モザイクが薄いとは感じたが、
このくらいのモザイクの濃さであれば問題のないレベルだ。
後半は2倍速にして見たがモザイクはしっかり入っている。
これのどこに問題があるというのだ。
警察に対して怒りで体が打ち震えてきた。
当局の政治的な意図が見え隠れていたからだ。
当時のAVは大きく3種類に分けられていた。
ビデオの猥褻基準を自主審査する組織である
「ビデオ倫理協会(ビデ倫)」で審査済みの商品と、
新興の組織「メディア倫理協会(メディ倫)」
での審査済みの商品。
そして、無審査である商品の3つだ。
AVメーカーとして設立したが、
創業当初は個人問屋であったため、
ビデオ店からは他社の商品も卸してほしいという依頼も多く、
自社商品以外の他社商品の卸販売が売上の70%を占めていた。
その中には無審査商品の取り扱いもしていたのだ。
そのため無審査商品については「猥褻検品」対策について、
厳重に社員にチェックをするように指示をしていた。
AVの審査基準は長らくビデ倫が全ての商品を扱っていたことで、
ビデ倫は権力を持ちすぎてしまい、
特定の老舗メーカーだけを優遇するような利権団体に成り下がっていたのだ。
不遇を受けていた新興メーカーが中心になって1996年に、
メディア倫理協会が設立された。
メディ倫マークのシールが貼ってある商品はゲオなどの大手レンタル店は
積極的に仕入れをするため、自分の会社もメディ倫に加盟をした。
メディ倫には同じ時期に設立した新興メーカーの、
「ソフトオンデマンド」の商品の人気が爆発し、
レンタルビデオ店、セルビデオ店の棚を独占していた。
ビデ倫審査の商品は仕入れ価格が高く、
モザイクも濃くユーザーが離れていくため店舗も、
仕入れ価格販売価格ともに低価格である、
インディーズメーカー作品を仕入れるようになり、
価格破壊が起こったのだ。
ビデ倫にとってみれば死活問題だ。
その対策としてビデ倫は警察OBを天下り先として働きかけたのだ。
そしてインディーズメーカーに何度も圧力をかけてきた。
当時はこれを警察による「インディーズ狩り」と呼ばれた。
うちの会社はその標的にされてしまったのだ。
そういった背景を知っていたため、
警察に対しての怒りがこみ上げてしまい、
すぐに高知の土佐警察に電話をした。
指摘されたビデオ、ちゃんとモザイクが入っているじゃないですか。
この程度のモザイクでインディーズAVを狙うのであれば、
あんたら警察が爺になったら天下るビデ倫メーカーも逮捕しなきゃ、
ユーザーが暴動を起こしますよ。いつでもパクりに来い!
若かったので威勢よく言い切ってやった。
すると1週間くらいしてから、会社に高知県警の刑事が10人ほどやってきた。
しかし、自分で商品の映像をチェックしており、
問題がないことに自信を持っている。
刑事と一緒に映像をチェックしていくうちに、
ここである事実が判明した。
カラミのシーンでほんの一瞬1秒ほど、モザイクが局部から外れる箇所があったのだ。
2倍速でチェックしていたため見逃していた・・・
歯切れの悪い返事しかできなかった。
若い刑事が威勢よく怒鳴り声をあげてきた。
はないだろ!これお前が作ったんだろ!
付き合いの仕入れ先のメーカーを売りたくない、とだんまりを決め込んだ。
と用意されていた逮捕状を突き付けられ、手錠をかけられた。
土佐警察は最初から逮捕するつもりだったのだ。
手錠をかけれたまま、羽田空港へ移動し、
手錠の上からタオルをかけられ一般乗客よりも先に搭乗をしたが、
周りから注目されているのは嫌でも分かる。
空港に着き土佐警察に移送された。
留置所に入り次の日から事情聴取が始まったが、
「問題のある商品をたまたま扱ってしまった」
という微罪ということもあり、
当初は48時間拘束された後に釈放されるはずだった。
しかし、ここでちょっとしたいざこざが起こってしまった。
釈放の際は形式上、
自分の言葉として作成された上申書を担当検事が作成し、
それを読んで問題が無ければ指印をして提出するのだが、
検事が作成した上申書には次の記述があった。
「これからは家族のためにもアダルトの仕事ではなく、真っ当な仕事を見つけて更生することを誓います」
『真っ当!?』
真っ当という言葉にひっかかってしまった。
次第に怒りがこみ上がってくる。
上申書の横に修正する記述を書いた。
「これからは業界の発展と、男性がさらに喜べるようなアダルトビデオ商品の制作に貢献できるように仕事を邁進していきます」
アダルトビジネスを見下した記述に反骨心が湧き出てしまった。
このことが担当検事の心証を悪くしてしまい、
結局、釈放どころか拘留期限は最大の20日間になった。
留置所では雑居房での生活で、シャブ中毒者や地元のヤクザがいたりと賑やかだ。
1人で瞑想する時間はたっぷり過ぎるほどあった。
これまでに自分がやってきたことを踏まえ、
そしてこれから目指す方向性について1つの結論を出した。
上申書で最初に検事が書いたように、世間ではアダルト関係のビジネスは、
軽蔑の対象だ。しかし、アダルトのどこが悪い。
こうなったら俺がアダルトを大人のエンターテインメントとして、
社会に認知させるしかない。アメリカではプレイボーイやペントハウスなど、
ポルノメーカーが普通に株式市場で上場をしている。
俺の会社を日本で最初に上場するアダルトメーカーにしてやる。
そう心に誓った。
罰金50万円をわざわざ妻が東京から裁判所まで持ってきてくれた。
妻とは創業間もない頃に結婚をして支えてもらっていた。
妻の一言で元気が出てきた。
会社に復帰してすぐに報告されたのが売上の激減であった。
それまで月商5000万円を維持していたのが、2000万円に届くかどうかという状態だった。
新聞にも「アダルトビデオ会社社長逮捕」と取り上げられてしまい、
取引店から注文を敬遠されるようになり倒産寸前の状況だ。
役員の1人が発した言葉が強く心に残った。
そこまでしてインディーズメーカーを潰したいのか・・・
裏工作?
待てよ・・・
起死回生のアイディアが浮かんだ。
本音を言えば上手くいくか分からなかったが、
このまま潰れるのを待つよりはダメもとでやろう!
昔から思い立ったらすぐ行動し、行動してから判断する方だった。
9回裏10対0、2アウトランナー無し、
誰が見ても10点差をひっくり返す逆転の可能性なんてない状況。
しかし、ゲームセット瞬間の間際に奇跡が起こったのだ。
卸販売をしたころに名簿屋から購入したレンタルビデオ店のリスト。
当時もこのリストが奇跡を起こしてくれた。
今回もこのリストに賭けてみたのだが・・・
結果、リストビジネスは最強だった。
そしてこの「リスト」が倒産後のアフィリエイトにも奇跡を起こすとは
その時は知る由もなかった。
続く・・・
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